今日もその店には幾人もの客が出入りしていた。
五十年戦争に続き獅子戦争が勃発しなお争いの続くここイヴァリースの地では、
最早武器を持たぬ者はおらぬ程、街中でさえ鋼につく血錆の臭いが漂う事は少なくない。
そんな世だからこそ店が繁盛しているという事実に、彼はまた胸を痛めていた。
ガリランドで武具を扱う商人ゲオルグ(仮名・50歳)は休みなく働き、日々を不安に暮らすばかり。
妻の趣味で、彼女と出会う切欠にもなったダンスや音楽も今となっては楽しむ余裕がなくなってしまった。
またあの調べにのせて踊ることの出来る日が訪れるのは、いつになるだろうか――。
すっかり商人姿が板に付いた妻の姿を見ては新婚の頃を思い出してしまう。
店のBGMに流したささやかなレコード音楽にのって、妻は無意識にステップを踏んでいた。
身に付いて離れない命の躍動を刻むその様子と店内に並べられて命を奪う物を見比べ、ゲオルグは感じる。
彼女は生きる時代を間違えて生まれてしまったのだろうか、と。
妻の横顔には聞こえるフガートと同じく、明るい中にどこか物悲しさがうかがえた。
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大袈裟だけどそんな光景です。
因みにフガートというのは遁走曲(フーガ)の一種で、提示部が1つだけしかないものを言います。
※2つがフゲッタ、3つ以上(多分。3つ+ストレッタかも)がフーガ
※この曲の場合そこまで厳格な形式で作っていないので参考程度にして下さい。
4拍子の原曲を3拍子に変え、木管四種+弦楽器の構成でアレンジしました。
敢えてワルツともメヌエットともせず”踊り”としたのはその辺の違いに詳しくなかったからです(笑
多分ワルツだと思うんだけど……。